金属という素材は「かたい・冷たい・ごつい」という、人間が直接ふれあうには不向きとも思われるイメージが付きまとってきました。 しかし近年の技術進歩により、金属という素材が人間の服飾文化と親和性が高い素材へと進化を遂げつつあります。 私達はその機能素材としての金属に注目し、2050年の新たな服飾文化に繋がるプロトタイプを制作しました。 特に、通常の布にはない「導電性」をいかしたアプリケーションを複数提示します。
アーティスト志望メンバーの熱烈な「金属愛」を応援するべくエンジニアが立ち上がったのがすべての始まりです。 この背景説明では「洋服といえば布で出来ているもの」という20世紀までの既成概念を打ち砕き、金属という素材が近年の技術開発によっていかに洋服素材として適したものへと変化してきたかを示します。
20世紀後半の研究開発によって、金属という素材は大きく進化を遂げてきました。 たとえばNASAは保温性や携帯性に優れたアルミ製ブランケットを開発したり、いくつかの企業では3Dプリンティング技術を発展させ樹脂だけでなく金属を出力できる3次元プリンタを開発しました。 こういった近年のアカデミックな研究開発の成果と、金属そのものの持つ導電性・熱反射・ジュール発熱・熱伝導・などの性質を組み合わせることで、21世紀ならでの応用が可能になると私たちは考えます。
金属の持つ良い性質を服飾文化と組み合わせたらどうなるでしょうか。 ゴテゴテのセンサーやAPIで固めることなく、金属という「生素材」の物理的な特性を活かしたアプリケーションを提案します。
近年は高度なセンサーモジュールが安価で販売され、またさまざまなAPIがオープンソースとして公開されており、ユーザーが簡単に欲しい機能を持つアプリケーションが作れるようになってきています。 しかし、そういったありものの組み合わせは、結局のところ表面的なおもしろコンテンツの域を出ることができないと考えます。 今回はより物理的なハードの段階からHACKをすることで、より深いレベルから新しい文化の創造を目指しました。
いちコンテンツではなく、によるプラットフォームとして「着るメタル」という世界観を広めることができれば幸いです。
Metalic Parka 2015(メタリックパーカ)は「着るメタル」という世界観を表すためのプロダクトです。
デザインと金属という機能素材について、説明をします
デザイン:差し色としての「メタル」 金属を着る文化がまだ浸透しきっていない2015年現在でも違和感のないデザインになっています。 銀色のメタリックな質感は、ファッションにおける差し色のように
####1. 特長1:熱伝導による温度調節 温度調節で「ほんわか/ひんやり」を直感的に変化させることが可能:金属そのもののひんやり感とゆるく電気を流すことによる発熱によるほんわか感。胸のロゴはタッチセンサーとして、温冷を直感的に変化させることができる。金属のもつ高い熱伝導のおかげ。 ####2. 特長2:保温と電位固定のための金属層 赤外線を反射する性質と、電位をGNDに固定する目的でパーカ全体に金属を入れています。 NASAのアルミ製ブランケットと同じ発想。あえてデジタルを入れずに生素材の性質を活かしている。
####3. 特長3:導通性によるSNS応用 ハイタッチや握手によるツイートやSNSフォロー:電気的にMetalicParka同士が結合することを検出して、SNS上で繋がることを支援する。「FBやってますか?」からの検索という、ネットワーキングパーティで大量に生まれる無駄時間を解決し、リアルとバーチャルでの関係をスマートに結んでくれる。これも金属素材が持つ導電性がなせる技。 ツイートとフォロリクは実装済みで、すでにつぶやくことが可能。相手のFBアカウントを自動で取得する部分については実装中。
####4. 特長4:Touche技術によるマルチタッチ検出(実装中) 金属でできたロゴの「どこを」「何本の指で」タッチしているかを取得することができれば、単一のロゴに複数のジェスチャー入力機能を持たせることができます。 Disney Researchが2012年に発表したToucheというセンシング技術を利用することで実現しようとしています。
たとえば、温度調節を目的とした「重ね着」や「薄着」といった考え方から開放されます。 布の服では調節幅に限界のある温度も、熱伝導で熱を逃したり、ジュール熱で熱を発生させることで手軽に調節することが可能です。
また、金属ならではの質感や素材感がファッションの幅を大きく広げます。
加えて「電気を通す」という性質が、ハイタッチからのSNS連携やデジタル通信といった、従来の服ではありえなかった機能を実現に導きます。
スマートフォンとbluetoothやWiFiモジュールを通じて繋がるようにすることで、SNS連携などの機能を手軽に利用できるようにする。 また、着るメタルとして金属自体の蓄電機能や、ペルチェ素子を仕組んだ靴による給電機能、無線化なども盛り込みたい。
金属と布地の固定方法などについても、専用の治具を開発することでうまくいくめどは立っているので、金属3次元プリンタなどを利用して開発を進めたい。
- 金属素材がもつ機能を生かし切ること。センサーやモジュールを使えば簡単にできることであっても、金属の性質を用いて実現できないかを考えた。(量産や頑健性という点からも強いと考えている)。 たとえば、熱伝導、通信、ジュール発熱という性質は、金属そのものが内在しているので、あえてニクロム線や素子をパーカには埋め込まなかった。マイコンなどは、今はモジュールとして外にだすことを考えているが、ベストとは限らない。
- 電磁気学
- 電子回路の物理設計(浮遊容量対策など)
- Twitter API
- Twitter4j (Twitter API のJavaラッパ)
- Arduino
- アルミシート
- 金属を身にまとうことで発生する浮遊容量を消すための物理設計
- 大面積のアルミ板に入るノイズに対してのロバストなデータ処理アルゴリズム:大容量コンデンサとしてのパーカをリセットする回路の考案
- Twitter連携ライブラリ以外のすべて
- 金属という素材、Arduino開発、電子工作につよい3人の組み合わせで、応用例のTwitter以外の技術については独自実装を行いました。
- (無論、プログラミングの関数で呼び出しているシリアル通信そのものなどはArduinoにすでに実装してあるものを利用しています)
- アナログ電気回路設計のノウハウ
- NASAのアルミ製ブランケットの製品データ
- Touche[Disney Research 2012] : センシング精度向上のために導入予定(未マージ)